法政大学時代のシラバス

法政大学教授時代の講義概要(シラバス)



 1、フェミニズム論(法学部・公開講座)(2000年度のシラバス)

フェミニズム論
田嶋陽子

現在人間教育の根本にもっとも必要とされているのは女性学である。女性学は人権意識を核としたフェミニズム思想をその根幹とする新しい学問である。古今東西、過去から現在に至るまで、世界中の文化・文明のほとんどが父権制と男性権力を中心に築かれてきた。その結果、文化・文明の根本には差別の祖型ともいえる女性差別があり、その弊害はあらゆるところにあらわれている。そこでは男女の意識も肉体も歪み、たえまない戦争、暴力、いじめ、そして環境破壊と問題は山積みしている。それらもすべてもとをたどれぱ人類の半分を占める女性を二級市民扱いしている男女間の力関係のアンバランスに端を発していると考えることができる。女性差別は構造となって、政治、経済、杜会、心理、教育とありとあらゆるシステムの末端にまで浸透し、生活意識・思考全般に巣くっているので、その解消はむずかしく、また時間がかかる。「近代は終わった」といわれ「反近代」や「脱近代」まで唱えられ21世紀の幕が開いたというのに、まだ目本の男女関係は前近代にも等しく、封建的な主・従/上・下/中心・周辺の状態で低迷している。一人ひとりが自己解放と男女平等杜会の実現にむけて努力しないかぎり、地球環境を守ることも世界平和も絵に描いたもちでしかない。女性学は男女の意識改革と社会制度の変革を目指すと同時に、男権の立場から構築されてきた従来の学問をフェミニズムの視点で見直す作業でもある。この授業がその第一歩となれぱいい。 

◇大別して、前期はフェミニズムの基本的な考え方を論じ、後期はその応用編となる。(前期に欠席がちとなる4年生は3年次で履修することがのぞましい)

1)父権制と性抑圧の構造(男杜会とは何か)
2)文化とは
3)結婚制度
4)法律の性差別
5)肉体の抑圧(美意識とファッション):
6)精神の抑圧(r女らしさ」「男らしさ」とは)
7)主婦制度(税金/年金/配偶者控除/「103万円の壁」)
8)母性神話/父性神話/幼児虐待
9)リプロダクティヴ・ヘルス/ライツ
10)父と息子/息子と母/母と娘/娘と父
11)性差別の温床としての家族
12)多様化する家族(シングル単位社会へ)
13)教育における性差別
14)昔話と童話にみる性の政治
15)恋愛/セックス
16)セクシュアリティ(処女/貞節/「自立した性」)
17)暴力・性暴力(レイプ/夫婦間暴カ)
18)セクシュアルハラースメント
19)「慰安婦」問題
20)レズビアン/ホモセクシュアリティ
21)「障害」者と性差別
22)宗教に見られる女性蔑視(仏教/キリスト教)
23)心理学と性差別
24)メディアと性差別
25)言語と性差別
26)芸術と女性
27)環境問題と女性
28)政治と性差別
29)改正雇用機会均等法/同一価値労働同一賃金法
30)「男女共同参画社会基本法」とは
31)男女の意識改革に向けて

◇後期には、授業の展開に応じて、各分野で活躍している研究者、活動家、専門家を招き、各論の一端を展開してもらうこともある。

参考文献:テーマに応じてそのつど紹介し、また必要に応じてプリントを配布。



 2、フェミニズムと表現(総合・選択)(2001年度のシラバス)

フェミニズムと表現-自由に生きること-
田嶋陽子

<授業の目的・内容>

自分の中の封印されている悲しみや怒りに光を当てることで、人は開放され自由になり、次への一歩を踏み出すことができる。「自分がほんとうにしたいことは何なのか」「なぜ人間関係がこじれるのか」に対する答えも見えてくる。自分や親をも含めた対人間関係のパターンを破り、新しい出発をめざすためのクラスにしたい。


<授業の形式・進め方>

前期:RC(Re-evaluation Counseling)の訓練。5月中旬の土日を合宿日にあけておくこと。

後期:Assertionの訓練に入る。

夏休みの合宿あり。

少人数のクラスになるので、円陣となっての学習が多い。自分を語ることが大切なワークとなるので、受講する学生は自分の関心のあり所をよく見極め、十二分にコミットする気構えで参加することが要求される。教科書その他の資料は開講時に発表する。


<成績評価の方法>

毎週レポートの提出が求められる。どれだけていねいに授業にかかわったか、その結果、よく感じられるようになり、よく考えられるようになること、気持ちが自由になり、リラックスし、創造的になれることが目標。一年後に、目に見えるようになったお互いの成長を語り合おう。



 3、基礎文献(基・選択) (2001年度のシラバス)

基礎文献ゼミ―表現とジェンダー―

田嶋陽子

<授業の内容>

ことばが社会を変えられるとすれば、より住みやすく自由で対等な社会を築くためには、
ことばに対してどのような態度をとれぱいいのか。日常何気なく使っていることぱやことばづかい、言い回しなどをジェンダーの視点
でチェック、検討し、表現に対する批評眼を養うと同時に、自らの態度、ことばづかいの検討、研磨を心がける。また女ことばと男ことばが必要かどうか、男女で伝達能カが違うのか違わないのか、男女間でコミュニケーションが成立するのかどうかなど、ことばを通してより豊かな人問関係の在り方を考えたい。


<授案の形式・進め方>

日常目にするCM、マンガ、新聞、小説、映像など、多媒体を材料、資料とし、発表とデスカッションを中心に展開する。
したがって目常生活にアンテナを張り、毎週、材科を集める作業と、数多くの参考書を読めることが出席の条件。
  

<教科書>

開講時に指示。参考書として、1.ロビン・レイコフ「言語と性」(有信堂)
2.ジェニファー・コーツ「女と男とことば」(研究杜)
3.キトレッジ・チェリー「目本語は女をどう表現してきたか」(福武文虜)


 4、欧米の社会と文化Ⅶ(フェミニズム)(国際文化学部 開講セメスター 選択)(2001年度のシラバス)

フェミニズムの視点は、従来の学問研究をも抜本から見直す作業である。世界中に戦争、暴力、いじめが横行し、
自然破壊に至る環境問題は収拾のつかない状況にある。悪の根源をたどれば、そこには差別の祖型ともいえる性差別の構造が見えてくる。世界の文化・文明はすべては父権制
と男権勢力の上に築かれてきた。女性抑圧の構造を解明し、
男女の意識変革と社会憤習の見直しや制度改革を目指す上で、日本の先をいく欧米社会に注目する。

<テキスト・参考文献>
映画、ビデオ、新聞、雑誌、etcそのときどきに応じて。

<授業計画>

第1回
「文化」とは 

第2回
性差別の構造

第3回
「第二の性」

第4回
「最後の植民地」

第5回
「去勢された女たち」

第6回
「女らしさの神話」

第7回
セックス/性別と男女の能力

第8回
ジェンダー/性別役割分業

第9回
FGM/処女/貞節

第10回
リプロダクティヴ ヘルス ライツ

第11回
セクシュアリティ

第12回
セクシュアル ファンタシー

第13回
セクシュアル ハラースメント

第14回
欧米の性差別法と日本の「男女共同参画社会基本法1999」

第15回
意識改革に向けて/教科書/TV etc

<成績評価方法>
1授業後に毎回提出するレポート
2最終試験

<学生へのメッセージ>

自分の目で見て考え、現実への認識を高めるため、毎回授業の後にレポート提出が義務づけられている。その努カ
が可能かどうか検討してから出席してほしい。

 5、時事英語Ⅱ(基・選必 特講)(2000年度のシラバス)

時事英語
世界の人々は差別とどう闘っているか―

田嶋陽子

<授業の目的・内容>
 民族、人種、老人、女性、子ども、ゲイ、そしてエイズ、障害といったマイノリティに向けられた差別に対して、世界の人々はどう闘っているのか。
 また暴力とは何か、性とは何か、映画を通して人間の在り方、在るべき姿を考えたい。
 各国の最新の映像、優れた映画作品を見て議論し、ひるがえって日本の状況を考える。
 英語力をつけると同時に視野を広め考える力をつけてエンパワメントを体験して欲しい。

<授業の形式・進め方>
クラスではリポーターを決めて英語でディスカッションする。毎週の映画鑑賞は、特別な場合をのぞいて、各自でビデオを見るか映画館に足を運ぶ。その上で、英語で感想レポートを書き、毎回それをもって授業に出席し提出したあと、ディスカッションに参加する。

<成績評価の方法>
毎回提出するレポートの内容と毎回のディスカッションへの参加度で決める



 6、英語特講(必修)(2000年度のシラバス)

第一教養部  英語クラス授業  シラバス

英語講読1
田 嶋 陽 子 


<授業の目的・内容>

 これまで「講読」の授業は試行錯誤の連続だった。学生が大学生であることを自覚し、英語に興味をもち、自発的に英語を学習するようになるためにはどうしたらいいか、考え続けた結果、今回2000年度の法1Eの「講読」のクラスの学生には My Book を持ってもらうことにした。


 学生一人一人が、半年間、あるいは1年間通して読む本を自分で選び、それを My Bookとする。学生は My Book を肌身はなさず持ち歩き、折あらば本を開いて英語に親しむことで、英語を日常のものにすることを目的とした。


 第1回目の授業(4月18日)では上記の目的と、授業の形式・進め方を話したうえで、「この試みは新しくて、従来のやり方と違うがやってみる勇気があるか」と学生に相談した。学生は驚いたが、やりたいと意思表示をした。そこで次週の授業までに、丸善、ビブロス、紀伊國屋、北沢書店などの洋書専門売り場を訪ね、My Book を探してくるように言った。
 選び方の注意として以下の4点を伝えた。
 勉強しようと思うな。
 小難しいものを選ぶな。
 翻訳のないものに限る。
 趣味にかかわるものにしたらいい。

 背伸びしないで趣味に近いものか、自分にとっておもしろいかおもしろくないかを基準に選ぶようアドバイスした。

 2回目の授業(4月25日)では、約束どおりすべての学生が My Book を購入していた。そのリストが別紙である。(翻訳がないことを条件にしたが、翻訳の有無に無知のまま購入した学生もいる。)


<授業の形式・進め方>

 前期、後期、必ず1回ずつ、自分の読んでいる本についてレポート発表する。一人あたり約20分。1回の授業で4人。前期10回で39人の学生が一回りする。


 一方で各学生の毎週の作業として、まずそれぞれが提出した計画表に従って、毎週1回、My Book のレポート(B5・1枚)を提出する。内容は、関心のある、あるいは感銘した1パラグラフのコピーとその日本語訳。教師は必要に応じてコメントする。毎週 My Bookに挑戦し、興味深いところ、感動したところを選んで和訳し、提出するという作業の積み重ねを大事にする。


<成績評価の方法・基準>

 毎回提出するレポートの内容と、発表内容で決める。



<教科書>

 別紙。(このサイトでは省略)

WordPress.com Blog.